川北:皆さんこんにちは、株式会社カワキタエクスプレスの川北です。今日は「2024年問題」について、少ししか知らない方も多いと思うので、その内容についてお話ししたいと思います。よろしくお願いします。
インタビュアー:本日もよろしくお願いします。
川北:お願いします。
インタビュアー:そもそもなんですけれども、「2024年問題」って何ですか?
川北:どんなことと捉えていますか?
インタビュアー:知っている範囲でお話ししますと、高齢化が進むことによって、働き手がどんどんいなくなってしまうとか、役職を担っていた方が退職していくことで中堅の方がどんどんいなくなっていく、という問題だと思っています。
川北:ドライバーがだんだん足りなくなってしまうということですね。
インタビュアー:どんどん辞めてしまうと、会社が経営できなくなるという問題だと思っていました。
川北:やっぱり若い人たちが魅力を感じて入ってくれるような業界にしなきゃいけないという意味合いで、そっちに進むという話なんですけど、そもそもは…
川北:「働き方改革」って知っていますか?聞いたことはありますか?
インタビュアー:聞いたことあります!
川北:4年前に「働き方改革」があったのを覚えていますか?そのとき、多くの業界で、休日をもっと取りましょうとか、労働時間を短くしましょう、という動きがありました。一般的な会社では、年間の残業時間を720時間以内にしましょうというのが、その頃に決まっていました。でも、運送業界や建設業、医療業界などは「いきなりはできないので、5年間猶予しましょう」とされていたんです。その猶予期間が2024年の4月に終了します。
インタビュアー:具体的にどういう内容なんですか?
川北:拘束時間というのがあって、運送業界の場合は、ドライバーが働く時間全体を管理しなければならないんです。それに加えて、残業時間を年間960時間以内、月あたり80時間以内に制限することが求められます。これが2024年問題と呼ばれる大きな課題です。
インタビュアー:なるほど、それは結構厳しいですね。
川北:そうなんですよ。この制限によって、例えば九州で取れた農産物を東京に運ぶ際に、今の長時間労働に依存している物流体制では、月80時間の残業時間では全然足りなくなる状況です。
インタビュアー:長時間労働を減らさなければならないのは理解できますが、実際にどうやって進めていくんでしょうか?
川北:それが大変なんです。たとえば、これまで10時間かけて運んでいたものを、同じ条件で6時間や8時間に短縮しろと言われても、現実的には難しいんですよ。
インタビュアー:長距離輸送以外でも、どんなときに残業が発生してしまうんですか?
川北:身近な例で言いますと、宅配便の時間指定が大きな要因になります。例えば、午前中の時間指定や、夜の8時から9時の時間指定などが可能ですよね。そういった場合、途中で別の人に交代できると良いのですが、現状ではそこまでの人手が足りていないんです。たとえば、朝の6時から積み込みに行って、順番通りに配達できれば早く終わるのですが、不在のお客様がいたり、再配達が必要だったりすると、夜の9時に配達が終わって戻ると、10時ぐらいになりますよね。
インタビュアー:それで普通に残業になってしまうんですね。
川北:そうなんです。でも、他の業界でここまで長い残業をする仕事って、なかなか思い浮かばないですよね。でも、そうした長時間労働のおかげで、皆さんは便利な生活を送れているんです。
インタビュアー:確かに、それがドライバーの方々の実態なんですね。
川北:はい、そういう背景がありますね。例えば、今後の労働時間削減の影響で、再配達も「当日中は無理で、次の日に回しますよ」なんてことが当たり前になるかもしれません。
インタビュアー:では、2024年問題で残業時間を削らないといけないことに対して、どんな問題が起こり得るんでしょうか?
川北:時間指定をなくしてください、という話になるかもしれません。例えば、今は東京に荷物が翌日届くのが当たり前だと思っている人も多いでしょうが、それがもしかしたら明後日になるかもしれません。また、再配達も当日中は無理で、次の日に回すことになりますよ、といった対応が必要になるかもしれません。
インタビュアー:それって、私たちの生活にとってはかなり大きな変化になりますよね。
川北:そうですね。便利さが少し失われることになります。でも、その便利さの裏には、長時間労働を支えるドライバーたちがいるわけです。彼らがどんどん減ってしまうと、困るのは私たちですから、なんとかしてドライバーを増やさないといけない。そうしないと、物流が成り立たなくなるんです。
インタビュアー:そうなると、少し不便を受け入れる必要が出てくるかもしれないですね。
川北:便利な世の中に慣れすぎていました。
インタビュアー:残業時間を削ることの話を聞いて、この業界の厳しさが見えてきました。では、実際にドライバーの方が感じている苦労について、もう少し教えていただけますか?
川北:この業界ではよく「他の産業より2割時間が長くて、2割給料が低い」と言われています。つまり、他の業種に比べて長時間労働なのに、賃金は低めなんですね。それで支えられているのが今の物流です。長時間労働を短くすると、当然ながら給料も減るわけです。でも、それでは生活が成り立たないですよね。なので、業界全体で労働の仕組みそのものを変える必要があるんです。
インタビュアー:具体的に、どんなふうに変えないといけないんでしょうか?
川北:例えば、働きやすい環境を整えて、ストレスを減らし、プライベートと仕事の両方を充実させるようにすることが重要です。そうすれば、もっと豊かな生活ができると思います。でも、ドライバーだけが今のままの長時間労働を続けていていいのか、という話になりますよね。運送会社としても、労働時間を短くするための努力が求められるんです。
インタビュアー:運送会社が積極的に変わることが大切なんですね。
川北:はい。ただ、運送会社は受け身になりがちで、例えば「運賃を上げてください」とお客さんにお願いするのが難しいんです。でも、それをきちんと「上げてください」とお願いできるようにならないといけないんです。運賃が適正価格でなければ、会社としても従業員に十分な給料を払えませんし、労働時間を短くするための人員増加にも対応できません。
インタビュアー:確かに、それには消費者側の協力も必要になりますね。
川北:そうです。消費者の方々にも理解してもらうことが重要です。例えば、「どうしても明日欲しい」という人がいれば、その分高い料金を払ってもらうことになります。今まで1500円で送れていたものが、3000円や5000円になるかもしれません。でも、そうやってしっかりとお金と時間のバランスを取れるようにすることで、労働時間を短くしても、ドライバーの給料を上げることが可能になります。
インタビュアー:でも、運送業界全体で見ると、まだまだ解決しなければならない問題が多いように感じますね。例えば、時間管理についてはどうなんでしょう?
川北:そこが大きな問題なんです。実は、ドライバーさんって時間管理されていないんですよ。運賃の何パーセントとか、走った距離によって歩合制でお金をもらっている人たちが多いんです。そうすると、ドライバーさん自身にも「時間」という概念があまりないんですね。
インタビュアー:それは驚きですね。どうして時間の概念がないんでしょうか?
川北:会社自体も「時間管理をしっかりしよう」という意識が薄いんです。例えば、現場で4時間待っていても、会社にはその間の待機時間を管理するという意識がないんです。待機時間も労働時間としてカウントして、その分の賃金を払うという習慣がないので、ドライバーはただ無償で待っているような状態になっています。
インタビュアー:それでは、ドライバーにとってはかなり負担が大きいですよね。
川北:そうです。例えば、積み込みの時間にしても、「10時に来てください」と言われて10時に行っても、実際に積み込みが始まるのが午後1時になることもありますし、荷卸しの場合も「朝8時に来てください」と言われて行ったものの、荷を下ろせるのは昼過ぎだった、ということもあります。
川北:港の方では、トラックがずらーっと並んだまま、長時間待っていることも珍しくありません。こうした待ち時間があるにもかかわらず、それが労働時間としてカウントされないということが多いんです。
インタビュアー:そういった待ち時間も、ドライバーの労働時間に含まれるべきだと思うのですが、どうして含まれていないんでしょうか?
川北:多くの運送会社は、その待ち時間を賃金に反映していないからなんです。ドライバーが現場で4時間待っていたとしても、会社には何の痛手もない状態です。待機時間も賃金として支払うべきだ、となったときに、運送会社側はその分をお客さんからいただかないといけなくなる。でも、これまで払っていなかったものを急に「待機時間分も払ってください」と言っても、お客さんからは「今まで払っていなかったのにどうして?」という声が出るでしょう。そこで、どうやって理解してもらうかが課題になるんです。
インタビュアー:なるほど、これまでの慣習を変えるのは簡単ではなさそうですね。
川北:そうなんです。そして、また長距離輸送の問題もあります。例えば、九州から東京に荷物を運ぶ、あるいは東北から東京に荷物を運ぶといった仕事では、時間がどうしても長くなってしまいます。特に、生鮮食品や農産物などの輸送は、産地が地方に集中していますので、そういったところから都市部への運送にはどうしても時間がかかります。
川北:それに、例えば築地市場で新鮮な魚介類を扱いたいというニーズがあっても、その魚介類は遠い産地から運んでこなければいけない。そのためには、一人のドライバーが長時間運転して、一人で帰ってくるという形になることが多いんです。これが、労働時間の問題をさらに深刻にしているんです。
インタビュアー:2024年問題とは何か、その原因や課題について詳しく教えていただき、ありがとうございました。次回の動画では、この問題に対してカワキタエクスプレスさんがどのような改善策を考えているのかについてお話を伺いたいと思います。
川北:こちらこそありがとうございました。次回もぜひよろしくお願いします!
インタビュアー:よろしくお願いします!