インタビュアー:トラックドライバーって、正直なところ稼げるんですかね? いい会社に勤めたサラリーマンの年収と比べて、どうなんでしょう?
川北:稼げるかどうかって言うと、まあ昔は稼げたよね。でも、今は基準が低くなりすぎた。昔は本当に稼げたんだけど、今だといい会社に勤めたサラリーマンの年収ほどは稼げないかな。だから、「稼げるか」って聞かれると、昔ほどではないけど、まあまあ稼げるとは言えるかもね。
インタビュアー:昔と今で何が変わって稼げなくなったんですか?
川北:例えば、ワタミの渡辺会長って知ってる? あの人は起業する前、佐川急便で2年間働いて1000万円貯めたんよ。
インタビュアー:1000万円!? それはすごいですね。
川北:うん、僕が商売を始めたのが今から35年前やけど、その時に佐川急便で働いてたら、月の給料が80万円くらいだった。
インタビュアー:そんなに高いんですか?
川北:そう、でも月に2回しか休みがなかったんや。休みは月に2日だけで、他の日は朝5時から夜中の12時まで仕事して、80万円が当たり前やった。
インタビュアー:それって、かなりブラックな働き方ですね……。
川北:そうそう。でも、昔はみんなそんな感じで働いてたよ。働く=頑張って長時間働くこと、そしてそれに見合うお金をもらう、ってのが普通やった。建築業とか土木業、運送業なんかも同じような名残りがあって、10年くらい前までそんな感じやったんよ。
川北:でも、最近はコンプライアンスが厳しくなってきたやん。ルールを守らないといけないとか、会社が責任を負うケースが増えたんや。
インタビュアー:そうですね、法令遵守が重要視されるようになってきました。
川北:例えば、トラックが交通事故を起こしたら、その前の1ヶ月とか3ヶ月の労働時間や勤務状況を調べられるんよ。で、長時間労働してたって分かると、「これは過労が原因ですね」ってなって、会社が訴えられるんや。だから、だんだんそういう働き方はできなくなってきてる。
インタビュアー:今、佐川急便ではもう月に80万円稼ぐっていうのは難しいんですか?
川北:うん、今はそんなに稼げんよ。労働時間も短くなったし、休みも増えたしね。月に2回休みじゃなくて、週に2回は休めるようになってきた。それで給料も下がってきたってわけ。
インタビュアー:なるほど。それじゃあ、今でもグレーな働き方をしている会社ってあるんですか?
川北:あるよ。実際、半分以上はそうなんちゃうかな。仕事って稼ぐためにあるっていう認識が根強いんよ。でも、最近の若い子たちは「稼ぐ」というよりも「やりがい」を求めることが多いから、そこが変わってきてるんやろうね。
インタビュアー:確かに、昔と今とでは、仕事に対する考え方が違ってきてますね。
川北:そうそう。「稼ぐためにトラックドライバーをする」とか「稼げないからトラックドライバーをやめる」とか、そういうのがだんだんと減ってきてる気がするね。今求められてるものは、もっと別のところにあるんや。
インタビュアー:次に2つ目の質問です。トラックドライバーの高額求人についてなんですが、よく「高額給与」とか「高額報酬」で募集をかけてる会社もありますよね。若者の中には、そういう求人に飛びついちゃう人もいると思いますが、川北社長はそのあたりどう思われますか?
川北:さっきの話と少し繋がるけど、高額求人に飛びつくと、やっぱり休みが少なかったり、1日の労働時間がめっちゃ長かったりすることが多いと思うんよ。うちも未経験の人を採用してるけど、何人かはやめていったね。その子たちが一つの基準にしてるのが、「手取りで30万円もらえるかどうか」ってところなんや。
インタビュアー:手取り30万円ですか。総支給額でいうとどれくらいになりますか?
川北:総支給額だと、35万から38万円くらいにはなるかな。で、その子たちが選んだ会社では、1日15~16時間働くことが普通で、休みも日曜日ぐらいしかなかったみたい。それでも、その子たちは「トラックの中で寝てもいいし、お金が欲しいから」って働くんやけど、時給に計算すると、実は最低賃金を割ってたりするんよ。
インタビュアー:なるほど、そういう状況ってまだまだあるんですか?
川北:うん、まだあると思うよ。だから「稼げる」と思って働き始めても、実際は労働時間が長いだけで、その分のお金をもらってるって感じやね。働けば働くほど、稼げるのは確かやけどね。
インタビュアー:そういう会社ばかりではないとは思いますが、高額求人に注意する必要があるということですね。
川北:そうやね。でも、もちろん高利益で給料が高い会社もあるにはあるよ。ただ、そういう感覚の会社が多いってこと。
インタビュアー:では、3つ目の質問です。トラック業界では「歩合給」という仕組みが根強く残っていると聞きましたが、これはどういうものなんですか?
川北:歩合給っていうのは、売上に対して何パーセントを給料として払うっていう制度やね。だいたい35%から40%が相場かな。例えば、100万円売り上げたら、その40%で40万円が給料になる。
インタビュアー:なるほど。売上が上がれば上がるほど、給料も増えるってことですね。
川北:そう。ただし、例えば100万円の売上があっても、高速道路を使って10万円かかったら、90万円が実質的な売上になるんよ。そしたら、その90万円に対して40%が計算されるってことになる。
インタビュアー:なるほど。ということは、稼ぎたいドライバーはできるだけ高速道路を使わずに、下道を走ってコストを抑えようとするんですね。
川北:そうやね。眠い目をこすって、少しでも経費を浮かせて稼ぐっていうのが、この業界で稼ぐための実態や。
インタビュアー:会社側は「高速を使いなさい」とか「時間を短縮しなさい」とは言わないんですか?
川北:いや、基本的には言わないね。ドライバーに任せてるところが多いよ。「何時に荷物を積んで、明日の何時にどこに届ける」っていう指示だけで、後はドライバーの自由。ほんまに自己責任って感じの会社が多いんや。
インタビュアー:なるほど。そういう働き方をしている会社はまだ多いんですか?
川北:うん、まだ多いよ。でも、最近は管理が厳しくなってきて、少なくなってきてるし、これからはもっと減っていくと思うよ。
川北:それって、「稼ぐ」っていう話とは違うんよね。仕事って、ただの労働だけでは、年を取っていくとやっていけなくなるやん。やっぱり、効率を考えたり、お客さんのことを考えたり、何か新しいアイデアを出して、「もう少しこうしましょう」とか提案できるようになっていかないと、トラックドライバーって所詮、そういう風にしか稼げなくなる。だから、大学を出た子たちが「トラックドライバーになりたい」って言っても、親が賛成するか?っていうと、絶対しないよね。そのままでは、そういう業界じゃだめだと思うから、変えていかないといけないと思う。
インタビュアー:実際、川北社長の会社にも20代の社員さんが多くいると思うんですけど、そういう方たちにはどういう働き方をしてもらってるんですか?
川北:うちはね、そもそも月給で評価して、月給で決まるっていう制度にしてるんや。どちらかというと、増やしたいのは「賞与やね」。例えば、近くに本田技研さんとかシャープさんとかあるけど、そういうところで働くのが、なんとなくスムーズな道っていうか、王道な道やと思うやろ?
インタビュアー:そうですね、やっぱり大手企業で働くのが安心だっていう考えが一般的ですよね。
川北:うん。でも、あの辺の会社って、年間賞与が5ヶ月とか6ヶ月分出るんよね。月給が30万円で、年間賞与が5ヶ月分、6ヶ月分って言われると「おっ、良さそうやな」って思うかもしれんけど、実際には30代前半ぐらいの人でも月給が20万とか22万ぐらいや。それで賞与が出て、年収としては30万円近くになるっていう、そういう感じが普通の会社なんよ。
インタビュアー:はい、時々この横を歩いている時も見失いました。
川北:うんうんうん。例えば、じゃあここにいるんで、順番で前のここはあれで見えるんですよ。
インタビュアー:なるほど、月給だけ見るとそんなに高くないんですね。
川北:そう。だから、僕はそういう会社みたいにしたいなと思ってるんや。うちの会社も労働時間を短くして、プライベートの時間を大事にできるようにしてる。うちの社員たちは、男の子でも育休をしっかり1ヶ月取ったりしてるよ。実際にそれができる会社なんでね。
インタビュアー:えっ!? 1ヶ月も育休取ってるんですか?
川北:そうや。やっぱりプライベートの時間も大事やし、夜は家に帰りたいし、休みも土日は欲しいっていう子たちがうちには勤めとる。逆に、土日なんていらんし、夜もトラックで寝てもいいっていう風に働いてる会社もあるけど、そういうところは実際は全然稼げてないんよ。外でご飯を食べないといけないし、意外と出費も多い。
インタビュアー:カワキタエクスプレスさんは、仕事と休みの時間をしっかり分けて、社員たちもちゃんとリラックスできるようにしてるっていうことですね。
川北:そうやね。だから、トラックドライバーは「稼ぐ」っていうイメージを持ってる人もいるかもしれんけど、実際の給料はその辺の工場で働いてる人たちと同じぐらいの水準やと思うよ。別に贅沢はできんかもしれんけど、生活に困るわけではない。
インタビュアー:僕、今20代なんですけど、僕の周りの友達も「ワークライフバランス」をすごく重視してるんです。実際、川北社長のお話を聞くまでは、トラックドライバーって長時間働いて、重労働で大変っていうイメージがありました。でも、プライベートの時間もしっかり取れているって聞くと、イメージが変わりますね。むしろ、働いてみたいなって思いました。
川北:そうなんよね。今の若い世代って、ボランティアとか社会貢献とか、やりがいを重視する傾向が強いやろ?
インタビュアー:そうですね。やりがいとか社会貢献を大事にする人が多いです。
川北:昔はそんなこと考えんかったよ。僕らが若い頃は「ボランティア」なんて言葉もなかったし。自分が稼げたらそれで良かったんよ。ただ、人に親切にするっていうのはもっと大事にされてた気がするけどね。「義理と人情」みたいなもんがあった。
インタビュアー:なるほど。時代とともに価値観が変わってきたんですね。
川北:そうやね。今の若い世代って、トラックドライバーとして働くことにもやりがいを感じられるんやと思う。トラックが止まったら、世の中が止まるんやから、社会への貢献度はすごく高いんよ。そこで、やりがいを感じて、その貢献がちゃんと評価されるような仕組みを作れば、収入も増えていくし、もっとやりがいを感じられると思う。
インタビュアー:そういう仕組みがある会社だったら、ちょっとやってみたいなって思いますね。
川北:うん、ぜひやってみてほしいね。うちに来てみたらどう?
インタビュアー:(笑)本当に興味が湧いてきました!
インタビュアー:僕らの世代が「やりがい」とか「社会貢献」を大事にすることを、どう思っていますか?
川北:僕自身も、どちらかというと「稼ぐ」よりも「やりがい」を感じたいタイプです。自分が何のために生きているのかとか、そういうことを考えると、誰かの役に立って、喜んでもらえたら嬉しいって思います。
川北:それが今の仕事の本質になってきてるんやと思う。昔は、「辛いことをしてお金を稼ぐ」っていう感覚やったけど、今はそうじゃないんよね。今は「仕事を通じて、どうやってやりがいを感じるか」ってことが重要なんや。
川北:今日のテーマは「トラックドライバーは稼げるのか?」ってことでしたけど、どうでしたかね?
インタビュアー:実際、僕も稼げるっていうイメージを持ってたんですけど、無理して自分の体を壊してまで働き詰めで稼ぐっていうイメージだったんです。でも、今はちゃんと休みを取れて、ワークライフバランスも整っている会社がたくさんあるんだなっていうことを知って、イメージが変わりました。
川北:これを見ている人も、きっと同じように感じると思います。うちの会社も、皆さんが抱いてる「トラックドライバー」のイメージとはちょっと違うと思うんや。ぜひ、うちに来てほしいな。TikTokとかもやってるから、そっちもぜひ見てみてください!
インタビュアー:今日はありがとうございました!
川北:ありがとうございました!